沈まぬ太陽
(昨日の空)
(今朝の空)
長編小説「沈まぬ太陽」を今から読むのは少々気が重いので
(以下、写真は全てインターネットから)
昨日、映画を観に行った。
近くにシネコンもあるし
渡辺謙もあんなに号泣していたことだし
水曜日はレディ-ス・デイで1000円だし・・。
前日、夫に
「沈まぬ太陽、あなたも見たいんだったら、休みの日に一緒に行かない?」
と誘ったら
即座に
「その映画、泣く?」
「いや、多分泣くシーンはないと思うよ・・。」といい加減に答えた。
「でも、渡辺謙、試写会であんなに泣いてたけど・・」
「う~~ん、まあ、御巣鷹山の事故は出てくるね~。」
「じゃあ、やめた。あなたには何度もだまされたから行かない。」
以前、私が誘って一緒に観た映画。
何だったか忘れたが・・・。
「泣くシーンはない」と断言して行ったら、違っていた。
こちらが恥かしくなるくらい夫一人がグシュグシュ。
それからは、泣く映画か、泣かない映画か
これを確認してからでないと行かなくなってしまった。
結局昨日一人で出かけたのだが
いきなり涙を誘うシーンから始まった。
朝、仕事に出かけていった夫から珍しく電話がかかってきた。
「日航のジャンボ機が墜落したみたいだよ、テレビつけてみて!」
まさに晴天の霹靂。
絶対安全を謳ったジャンボ機神話が崩れた日だった。
日本と違って報道量はそれほど多くなかったが
それでも、滅多に日本の事が話題に上らないアメリカのニュースで
連日事故の様子を伝えていた。
犠牲者だったと知ったのはラジオで。
「上を向いて歩こう」が流れていた。
それからの数日間、元日航職員の一人として
私も気分がすぐれなかった。
犠牲者520人と言う航空史上最悪最大の事故。
あれほど日頃から安全、安全と社是として叩き込まれていたのに。
その後の事故調査で機体に問題あり、で
現場で働く職員は誰一人として罪はないということが分かった。
以前、インターネットで123便のコックピットや客室など
機内の最後の様子が録音されたボイスレコーダーの音声を
私はずっと泣きながら聞いたことがある。
突然の大きな衝撃音にコックピットの誰かが気づくところから始まる。
機内アナウンスをする声や、トイレに行きたいと言うお客様に対して
どう対処すればいいか指示を仰ぐスチュワーデスの落ち着いた話しぶり。
それに対して穏やかな声で指示を出す、副操縦士の声。
しかし、時は刻々と過ぎて行き・・・
懸命に機体を立て直そうとしている機長と副操縦士の緊迫した会話に変化する。
そして最後の最後まで、機首を上げようと操縦桿と戦っている副操縦士に
機長の「あたま、上げろ!あたま、上げろ!」の怒声というより悲鳴に近い声。
その間、ずっと警告音が鳴り響いて・・・。
そして「あーー」と言う機長の声と大きな衝突音らしきものを最後に終了していた。
客席では緊急着陸に備え低い体勢をとっていて
お客さんは顔が上げられず外は見られなかっただろうし
また、そんな余裕もなかっただろう。
しかし、コックピットからは山々が目前に
迫ってくるのがはっきりと見えていたはず。
その時の彼らの恐怖心や絶望感はいかばかりだったろう。
しかし、衝突の直前まで彼らは全力を尽くしていた。
使命を果たそうとしていた。
訓練生のとき、緊急事態発生時に機内に流される
日本語と英語で録音されたアナウンスを聞いた事がある。
訓練とはいえドキドキしながら聞いていたことをありありと思い出した。
あれと同じアナウンスがずーっと流れていた。
そして、これは訓練ではなかった。
あの事故で、夫と同じ大学の研究生だった若い男性が亡くなった。
大阪の婚約者に会いに行く途中だったそうだ。
キャプテンの妹さんは義母の知人の知人。
未だに、ある問題を抱え関係者と係争中だと聞いている。
(JAL本社のセット。国民航空 NAL となっていた。)
日本航空の長い歴史の中に私は一瞬だけ籍を置いたが
あれほどの大きな組織で、さらに政治やお金が絡んでくると
下っ端の私などには窺い知れない
ドロドロとした魑魅魍魎の世界があったことだろう。
そんな中「王道」を進んでいった主人公達の生き方は
今もこれからも変わらず理想像であり続けて行って欲しいと思う。
映画の冒頭 象が主人公に撃たれて倒れていくシーンは
まさに「虚像(巨象)、墜つ」を象徴していたのだろうか。
最後に余談だが・・・。
以前の記事に書いた故山田辰夫さんが出ていた。
JALの全ての制服のデザインをごちゃ混ぜにしていて少々奇妙だった。